助成金の不正受給はなぜ起きる?意図せずとも陥る落とし穴と罰則を解説

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はじめに

「助成金」と聞くと、“返さなくていいお金”、“国からもらえる制度”というイメージを持つ経営者も多いでしょう。

しかし、その裏側には知られざるリスクがあります。助成金は正しく使えば企業成長の追い風になりますが、一歩間違えば“不正受給”とみなされ、返還命令・刑事罰・社名公表という重大な結果を招くこともあります。しかも最近では、「意図せず不正をしてしまった」経営者の話をよく聞きます。創業融資の窓口に相談に来られる方もいらっしゃいますが、その時点でもう手遅れであることもつらい事実。

そんな事態にならないように、本記事では、助成金の仕組みから不正受給の実態、経営者が注意すべきポイントを専門家の視点で解説します。

コンサレッジ株式会社 代表取締役

監修者:太田 耕一郎
コンサレッジ株式会社 代表取締役社長
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※本コラムでご紹介する内容は専門家および創業融資の窓口®(コンサレッジ株式会社)の監修によるもので、一般的な創業融資を受けるための方法です。

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助成金とは? その目的と構造

助成金は、厚生労働省などの行政機関が実施する“雇用や成長支援のための制度”です。
キャリアアップ助成金、両立支援等助成金、働き方改革推進支援助成金などが代表的で、多くの経営者が聞いたことがあるものでしょう。

補助金との違いは「公募・競争がなく、条件を満たせば原則受給できる」点。
つまり“権利的性格”を持つ制度ですが、そのぶん申請内容の正確性と実態の整合性が極めて重視されます。

不正受給とは? ― 意図的・無自覚の2つのタイプ

厚生労働省では、不正受給を次のように定義しています。

Warning

「虚偽または不正の手段により、助成金を受給した場合、または受給しようとした場合」
(出典:厚生労働省『雇用関係助成金 不正受給事案一覧』)

不正受給には、大きく2つのパターンがあります。

意図的な不正

虚偽の書類を作成したり、従業員の出勤・雇用期間を改ざんしたりする行為。
悪質なケースでは、複数の社労士やコンサルティング会社が関与することもあります。

無自覚の不正(意図せず違反してしまうケース)

経営者本人が「不正のつもりはなかった」のに、

  • 従業員の雇用実態と申請内容に食い違い
  • 書類を外部コンサルタント任せにして内容を把握していない
  • 助成金採択後の報告・実施管理を怠った

などで結果的に不正認定されるケース。

厚労省の統計によると、**不正受給の3割近くが“無自覚型”**です。

よくある不正受給の事例

以下のようなパターンが、実際に不正認定されています。

ケース1:従業員の雇用日・退職日のズレ

採用日を前倒しして申請、または退職後も在籍扱いにした例。
監査時に従業員本人への聞き取りで発覚する。

ケース2:書類の“代筆”や“まとめ押印”

外部コンサルタントに一任した結果、虚偽記載をされていた。
本人は「知らなかった」が、不正受給と認定。

ケース3:対象者の実態が条件を満たしていない

短時間労働者を「正社員転換」として申請していた。
勤務時間や賃金条件の整合性で虚偽が判明。

ケース4:コンサルティング業者主導での虚偽申請

“受給できる”と勧誘され、書類を丸ごとコンサルティング会社に代行依頼。
採択後に監査で不備が見つかり、全額返還+3年間の受給停止

不正が発覚した際のペナルティ

不正が確認されると、次のような措置が取られます。

  • 助成金の全額返還
  • 加算金・延滞金の支払い(最大で1.5倍近くに)
  • 厚生労働省ホームページへの社名・代表者名の公表
  • 刑事罰(詐欺罪)による告発の可能性

(出典:厚生労働省「不正受給に対する対応方針」)

実際、社労士事務所ですら不正関与で公表される事例も出ています。
このリストは、厚労省公式サイトで誰でも閲覧可能です。

厚生労働省:不正受給事案一覧

「知らなかった」では済まされない理由

助成金は最終的に“経営者本人”が責任を負う制度です。
「社労士に任せていた」「コンサルタントに言われた通りにした」では免責されません。

たとえば、ある中小企業では次のようなことが起きました。

【事例1】

コンサル会社の指示通りに書類を提出し、100万円の助成金を受給。
数カ月後、従業員の聞き取り調査で日付の不一致が発覚。
→ 経営者本人が不正受給とされ、全額返還+行政処分

【事例2】

本人が内容を理解せず印鑑を押していたが、
申請データ上で賃金条件が異なり、監査で虚偽申告と判断。
→「知らなかった」では済まず、刑事告発に。

太田さんコメント(専門家視点)

コンサレッジ株式会社 代表取締役
編集長 太田

助成金は“もらえるお金”ではなく、“事業の継続と雇用を支える仕組み”と認識しましょう。
制度の趣旨を理解せずに金額だけを追うと、結果的にリスクの方が大きくなります。
不正受給が一度でも認定されると、その後の銀行融資や補助金審査にも影響します。
実際に「助成金の不正受給が理由で融資が断られた」事例もあるため、助成金の受給は慎重に。

経営者が今すぐできる5つの対策

1. 申請内容を“自分の言葉で説明できるか”を確認

人任せにせず、仕組みを自社で理解する。

2. 書類・データを全て自社で保管

代行会社任せにせず、雇用契約書や賃金台帳の控えを残す。

3. 監査に備え、従業員にも内容を共有

面談での聞き取りで食い違いがないよう、社内で説明会を。

4. 顧問社労士・専門家と定期確認

制度変更や運用ルールが年に数回変わるため、最新情報を追う。

5. “おいしい話”を鵜呑みにしない

「誰でも受給できる」「書類だけで通る」という勧誘には注意。

まとめ

助成金は正しく使えば強力な経営支援ツールです。

しかし、知識不足や丸投げ体制のまま申請すれば、
意図せず“違反者”になるリスクがあります。制度の趣旨を理解し、数字と実態を一致させる。
その姿勢こそが、経営者としての信頼を守る最善の防衛策です。

出典・参考リンク

  • 厚生労働省「雇用関係助成金 不正受給事案一覧」
  • 厚生労働省「不正受給に対する対応方針」
  • 日本経済新聞「助成金不正、社労士も摘発」2024年版

本コラムは創業融資の窓口®が独自に制作しており、公正・正確・有益な情報発信の提供に努めています。 詳しくはコンテンツポリシーをご覧ください。 もし誤った情報が掲載されている場合、お問い合わせよりご連絡ください。

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