【悪質業者に注意】助成金コンサルタントの選び方と高額報酬・不正受給のリスク

はじめに

助成金は「返済不要のお金」である一方、正しい申請には知識と手続きの正確性が求められます。そこに目をつけて、

• 高額な手数料を請求する
• 実態のない書類作成を誘導する
• 不正受給になるような申請をけしかける

といった悪質コンサルのトラブルが後を絶ちません。

実際に、各地で「助成金コンサルによる不正受給」「悪質代理申請」「着手金詐欺」のニュースが報道されていますが、問題は氷山の一角と言われています。

この記事では、助成金の専門家を選ぶときに必ず知っておくべき

• ・悪質業者の手口
• ・依頼側に起きる最悪のリスク
• ・正しい専門家の見極め方
• ・経営者が今日からできる安全対策

までを、専門家としての実務視点で徹底解説します。

助成金コンサルを巡るトラブルが増えている理由

助成金は「返さなくてよい資金」であり、経営者にとっては魅力の大きい制度です。
その一方で、申請には以下のような手間と専門性が必要になります。

• ・就業規則や契約書などの整備
• ・給与計算の整合性
• ・出勤簿・賃金台帳のチェック
• ・対象要件の確認
• ・申請書類の作成
• ・納期の遵守

その煩雑さから、専門家に依頼するケースが増加し、同時に「助成金を簡単に受給できる」と誤認させる悪質業者の参入が進んでいるのが現状です。

悪質コンサルが使う典型的な手口

助成金コンサルのトラブルは、決して「一部の特殊なケース」ではありません。相談に来られる経営者の話を聞いていると、驚くほど似たパターンが繰り返されています。

• 「そんなに簡単に出るなら…」と信じてしまう甘いセールストーク
• その場のノリでサインさせる高額な契約書
• 気づけば実態と違う書類が出来上がっている申請プロセス

ここでは、現場で実際に見聞きしてきた内容も踏まえながら、悪質コンサルがよく使う典型的な手口を整理してお伝えします。
自社を守るための「危険信号チェックリスト」として読んでもらえればと思います。

1. 「絶対おりる」と言い切る（要件確認なし）

本来、助成金は要件に合致した企業のみが対象です。しかし悪質な業者は、要件の確認もせず、

「大丈夫です、出ますよ」
「受給率100%です」
「とりあえず申請しましょう」

という営業トークで契約へと誘導します。

2. 高額な着手金を先に請求する

本来、健全な社労士や専門家は着手金なしもしくは低額（数万円以内）が一般的です。しかし悪質業者は、

• 着手金10万〜30万円
• 書類作成費の名目で追加請求
• セミナー後すぐ契約を煽る

などの手法でお金を先取りし、その後連絡が取れなくなるケースが多発しています。

3. 形式だけ整えれば通ると嘘をつく

例えば次のような危険な指示が典型です。

• ・架空の勤務実績を作成する
• ・出勤簿を後から書き換える
• ・雇用契約日・入社日を操作する
• ・実態のない「研修」を作成する
• ・実際には行っていない業務改善を記載

こうした行為を誘導してくる業者は、100%アウトです。

4. 代理申請ができないのに「できます」と偽る

助成金の申請は、社労士以外が代理で行うことは法律上できません。社労士資格がない業者が申請書を代行するのは違法です。

5. 審査中に音信不通になる

典型的な詐欺パターンです。着手金を回収した後、進捗報告もなく、最終的には連絡が途絶えるケースが報告されています。

悪質コンサルに依頼すると何が起きるのか

結論として、以下の 3つのリスクは非常に重いです。

1. 不正受給に該当 → 企業名が公表

厚労省は、不正受給を行った企業名を公式サイトで公表します。これは全国から閲覧され、数年間は残り続けます。

• ・信用低下
• ・取引先が離れる
• ・採用が困難になる

など、企業経営へのダメージは計り知れません。

2. 刑事事件・返金・追徴金のリスク

不正受給は「返還すれば済む話」ではありません。

• ・助成金の返還
• ・加算金（追徴金）
• ・刑事罰（詐欺罪に問われることも）

に発展するケースもあります。

3. 銀行借入がほぼ不可能に

金融機関は、不正受給の経歴に非常に敏感です。

• ・公庫
• ・信用金庫
• ・地銀
• ・都銀

いずれも「不正受給＝信用リスクが極めて高い」と判断し、その後の融資は極めて困難になります。
つまり、たった数十万円・数百万円の助成金のために事業の未来すべてを失う可能性があるということです。

経営者が引っかかりやすい心理状態悪質業者は、次のような心理のスキを突いてきます。

• 「返さなくてよいお金が欲しい」
• 「難しい手続きは誰かに丸投げしたい」
• 「他の会社ももらっていると聞いた」
• 「今の経営状態で少しでも資金が欲しい」
• 「自分の会社は大丈夫だろうと油断する」

そして最も多いのは、経営者本人は不正の意識がないまま巻き込まれるというパターンです。従業員への聞き取り調査で日付の食い違いが発覚し

「不正受給」

とみなされるというケースも現実にあります。

正しい専門家（本物）を見極めるチェックリスト

ここでは、失敗しないための正しい専門家の見極めチェックリストをご紹介します。

1. 社労士資格の有無を必ず確認する

助成金申請を代理できるのは、社労士だけ。

を確認しましょう。

2. 着手金が異常に高くないか？

一般的な相場

• 着手金：0〜3万円
• 成功報酬：受給額の10〜20%

悪質業者の特徴

• 着手金：10〜30万円
• 成功報酬：30〜50%
• 「今日契約すれば割引」などの煽り文句

3. 要件説明が具体的か？

本物はできること・できないことを明確に言います。

• 悪質：「大丈夫です、全社出ます」
• 本物：「御社の状況だと、この助成金は〇〇がボトルネックなので別の制度の方が適切です」

4. 必ず実態確認を行っているか？

本物の専門家は、

• ・出勤簿
• ・・賃金台帳
• ・契約書
• ・シフト表
• ・雇用契約の整合性

を丁寧に確認します。悪質な業者は、これらを確認せず「書類だけ整えましょう」と言い出します。

5. 不自然に派手で過剰な実績アピールをしていないか？

次のようなフレーズは危険信号です。

本物の専門家は、むしろ慎重に説明します。

悪質コンサルに当たらないための行動ステップ

助成金まわりのトラブルの多くは、「知らなかった」「確認しなかった」ことから始まります。

裏を返せば、いくつかのポイントを事前に押さえておくだけで、悪質業者をかなり高い確率で避けることができます。

ここでは、専門家任せにしすぎないために経営者が取るべき最低限のチェックポイントを、
今日からできる行動ステップとしてご紹介します。

1. 助成金の概要だけでも自分で理解する

要件を「ざっくり」でも知っていれば、怪しい提案が見抜けます。

2. 2人以上の専門家に意見を聞く

悪質業者は「比較される」のを最も嫌います。最低でも2〜3名の社労士に相談しましょう。

3. 書類への署名・押印前に内容を必ず読む

「任せてください」
「書類はこちらで作成します」

という言葉で流されないように。

4. 従業員の勤務実態との整合性を常に確認する

特に

• ・出勤日
• ・勤務時間
• ・研修の実施
• ・雇用契約日
  

は、ズレると一発アウトです。

5. 不自然に儲かる話は100%疑う

「簡単に100万円受給できますよ」は詐欺の常套句。

よくあるトラブルの流れ

ここでは、実名・事件名には触れず、実際に報道された類型を抽象化してご紹介します。

ケース①：誘導されたまま申請 → 不正受給扱いに

• コンサルに勧められ申請
• 実態と異なる勤務日が書類に記載
• 監査で従業員の証言と食い違い
• 結果として「不正受給」に分類
• 返還＋加算金＋企業名公表

経営者本人は「不正の意図なし」でも、この結末になります。

ケース②：着手金だけ取られ、連絡がつかなくなる

• セミナー終わりに即契約
• 着手金20万円
• 書類作成は遅延
• 電話がつながらない
• メールの返信なし
• 結局、申請すら行われていなかった

ケース③：高額報酬で会社の資金繰りが悪化

• 受給額の30〜40%を請求
• 戻ってきた助成金の半分以上がコンサルへ
• 実質、会社の負担増
• 再申請も依頼させようと囲い込み

経営者が今日から取るべき「3つの守り」

助成金は、正しく使えば会社の成長を加速する素晴らしい制度です。
しかし、悪質なコンサルに巻き込まれると、一瞬で企業リスクに変わります。

では、今できる最初の守りは何か？

1. 助成金の基礎だけは自分で把握する

制度の最低限の理解がリスク回避の第一歩。

2. 契約前に必ず専門家の資格と事務所を確認する

「社労士かどうか」を必ず調べる。

3. 書類の整合性（勤務・給与・契約）を常にチェックする

帳簿を綺麗にするだけでなく、実態と一致しているかどうかが最大のポイント。

助成金は信頼できる専門家と使うのが最も安全

最後にこの記事の要点を整理します。

助成金は、正しく申請すれば事業の成長を後押しする強力な武器です。

その一方で、不正や悪質業者に巻き込まれれば、会社の未来そのものを失わせかねないハイリスク領域でもあります。だからこそ、「専門家を選ぶ力」が、助成金活用の最重要ポイントと言っても過言ではありません。

安全に・正しく・長期的に、会社にプラスの影響を与える助成金活用をしていきましょう。