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補助金の最新情報や創業を成功せせる方法
このコラムでわかること(目次)
はじめに
「助成金がもらえるなら、申請しない手はない」
――そう考える経営者は少なくありません。
たしかに助成金は返済不要の公的支援です。資金繰りが厳しい企業にとって、魅力的な制度であることには違いありません。
しかし、安易な申請が経営リスクに直結することがあるのも事実です。
本記事では、助成金制度の仕組みを整理しながら、見落とされがちなデメリット・リスク・注意点を専門家の視点で徹底的に解説します。

監修者:太田 耕一郎
コンサレッジ株式会社 代表取締役社長
支援実績537社(2025年10月末時点)に対して、融資実行率93.8%、企業生存率98%を誇る、起業コンサルタント。さまざまな角度から起業を志す人に最適な融資計画やコンサルティングに強みを持つ。
※本コラムでご紹介する内容は専門家および創業融資の窓口®(コンサレッジ株式会社)の監修によるもので、一般的な創業融資を受けるための方法です。
実際には融資を受ける人の状況や業種、ご経歴・ご実績によって、さまざまな方法があります。
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※本コラムでご紹介する内容は専門家および創業融資の窓口®(コンサレッジ株式会社)の監修によるもので、一般的な創業融資を受けるための方法です。
助成金とは?その仕組みと目的
助成金とは、主に厚生労働省や地方自治体が実施する雇用支援・人材育成などの目的を持った給付制度のことです。
たとえば、キャリアアップ助成金、両立支援等助成金、人材開発支援助成金などが代表的で、多くの経営者にとっても聞き馴染みのある助成金でしょう。
補助金との違いは以下の通りです。
| 項目 | 助成金 | 補助金 |
|---|---|---|
| 主な実施機関 | 厚生労働省 | 経済産業省・自治体 |
| 対象 | 雇用・人材・働き方改革 | 設備・開発・新事業支援 |
| 審査方式 | 条件を満たせば原則受給可能 | 採択制(倍率あり) |
| 返済義務 | なし | なし |
| 主な注意点 | 要件不備で返還リスクあり | 採択されない可能性あり |
つまり、助成金は“もらいやすい”印象がありますが、実際には細かい要件を継続的に満たす管理力が必要なのです。
助成金のデメリット・リスク
① 継続的な人件費負担が生じる
助成金の多くは「従業員の雇用維持」「賃上げ」「正社員化」などを条件としています。
例えばキャリアアップ助成金では、非正規社員を正社員に転換することで支給されますが、転換後の給与水準を維持できなければ返還対象になる場合があります。さらに、日本政府は2030年に最低賃金1,500円を目指す方針を打ち出しています【首相官邸「新しい資本主義実行計画」より】。
これは単なる政策目標ではなく、既に毎年3〜4%の賃上げが進行しており、企業は中長期的に「時給1,500円時代」を見据えた経営を求められています。
助成金で一時的に人件費を上げても、補助期間が終われば自社負担になります。
経営体力がない状態で助成金を“使ってしまう”と、数年後に資金ショートするケースがあるんです。
② 書類・監査対応の負担が大きい
助成金は「受給したら終わり」ではなく、その後の監査対応が義務として発生します。
特に厚生労働省が実施する雇用関係助成金は、受給後5年間の保存義務があり、突発的な監査に備える必要があります。
監査では、次のような点が細かく確認されます。
- 出勤簿と給与明細の日付一致
- 就業規則・雇用契約書・出勤簿の整合性
- 対象社員の転換日・勤怠履歴の正確性
- 社会保険料・源泉所得税の納付状況
もし、経営者と従業員の証言や日付に相違があれば、それが例え故意でなかったとしても「虚偽申請」とみなされ不正受給扱いになるリスクもあります。
③ 不正受給扱いのリスク
厚生労働省は毎年「不正受給事業主の公表一覧」を公式HPに掲載しています。
実はここに社会保険労務士事務所などの専門家までもが掲載されており、決して他人事ではありません。
出典:厚生労働省「雇用関係助成金の不正受給企業の公表一覧」
(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/kochokin_husei.html)
多くのケースで、経営者自身は「不正の意図がなかった」と主張します。
しかし、コンサル会社や代行業者に任せきりで提出した結果、不正と判定される事例が後を絶ちません。
具体的な実例
- コンサルに勧められ、社員の雇用形態を“形式上だけ”変更して申請 → 不正受給判定。
- 採択後の監査で、従業員の入社日や出勤記録に食い違い → 「故意でなくても」返還命令。
不正受給は刑事事件化するリスクもあり、銀行融資がほぼ不可能になるほどの影響を残します。
④給付までの時間が長い
助成金は申請から支給までに平均で3〜6か月、長いと1年近くかかります。
つまり、「今すぐ資金が必要」という経営課題には向きません。
また、先に支払ってから申請する「事後精算型」のため、資金余力がない企業ほど苦しくなります。
“助成金で資金繰りを立て直す”という考え方は危険ですのでやめましょう。
⑤ 制度変更のリスク
助成金は国の予算によって毎年度内容が改定されます。
「昨年は支給されたのに、今年は廃止された」「条件が厳しくなった」ということも珍しくありません。
長期的な事業計画に助成金を組み込むのはリスクが高いため、補助的な資金ぐらいの位置付けで捉えておきましょう。
助成金を使う前に確認すべき「5つの現実」
- 助成金は後払い。先に人件費を払う体力が必要。
- 監査で帳票類に矛盾があれば返還対象。
- 条件変更・廃止の可能性が毎年度ある。
- 不正受給は意図がなくても社名が公表される。
- 助成金は“もらう目的”ではなく“経営強化の結果”として考える。
今やるべきシミュレーション:「時給1,500円時代」に耐えられるか
では早速、最低賃金1,500円を前提に、自社の人件費構造をシミュレーションしてみましょう。
前提を下記のようにすると、
- パート社員5名(時給1,200円→1,500円)
- 1日6時間×月22日勤務
→ パート5名が「1日6時間×月22日」勤務なら、月間人件費は79.2万円から99.0万円に上昇し、月あたり19.8万円、年間237.6万円の増加となります。
※社会保険の会社負担・賞与連動・法定福利などはここに加算される可能性があるので、実務の試算では**+15〜20%程度の“オンコスト”**も別途見ておくと安心です。
これを“助成金で賄える期間”は一時的。
助成金が終わった瞬間、その増加分を会社が支払う体力がなければ、経営は圧迫されます。
数字で経営を見る練習をしておかないと、助成金が企業の“毒薬”になってしまうことにも。まずは助成金なしでも成り立つ損益構造をすぐに確認しましょう
成功と失敗の事例
成功事例:助成金を“目的化しなかった”飲食店経営者
関東圏の飲食店オーナーは、助成金をあくまで“社員定着のきっかけ”と位置づけ、補助期間後も人件費を内部留保でカバー。
結果、助成金終了後も黒字経営を継続。
失敗事例①:コンサルティング任せで不正受給扱いに
都市部で美容サロンを経営する社長は、外部コンサルティングの提案で申請したが、勤怠データの整合性に誤りがあり不正認定。
社名が厚労省HPに掲載され、銀行融資が全てストップされるという結果に。
失敗事例②:賃上げを維持できず返還命令
地方製造業では、キャリアアップ助成金を利用して時給を引き上げたが、翌年売上減少で減給。
監査でその事実が発覚し、過去分全額返還を命じられた。
専門家からのアドバイス
助成金は“もらうこと”が目的になった瞬間にリスクが生まれます。
本来は、人材育成や生産性向上など“目的のための手段”であり、
制度に振り回されない“数字での経営判断”が何より大切です
まとめ:助成金は経営の「通過点」として活用を
助成金は、条件を満たせば得られるありがたい制度です。
しかし、一時的な資金補助であり、経営の土台を作るものではありません。
助成金をきっかけに、
- 自社の人件費構造を見直す
- 経営体力を数値で把握する
- 将来の固定費上昇に備える
――これが本来の正しい使い方です。
安易な申請はリスクを招きますが、冷静な経営判断と体力分析があれば、助成金は成長の加速装置になります。
制度に振り回されず、数字に基づく経営で、長く続く会社を目指しましょう。
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実際には再挑戦の余地は大いにあります。まずは信用情報を確認し、安心して次の一歩を踏み出しましょう。
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出典・参考リンク
- 厚生労働省「雇用関係助成金一覧」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/ - 厚生労働省「不正受給企業の公表一覧」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/kochokin_husei.html - 首相官邸「新しい資本主義実行計画」
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/atarashii_sihonshugi/ - 日本総研「最低賃金1500円時代に備える中小企業経営」
https://www.jri.co.jp/ - 日経新聞
最低賃金、遠い「1500円目標」 20年代実現には年7%上げ必須」https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA08BFB0Y5A700C2000000/
支援実績537社(2025年10月末時点)、融資実行率93.8%、企業生存率98%を誇る、創業融資支援専門会社のコンサレッジ株式会社直下の編集部です。不安や悩みを解決して社長としての第1歩を歩みたい方に創業融資の基礎知識や他では知れない創業融資事情をお届けします。

